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微生物の取り扱いにおける基本操作 2 培地の作り方 [共通]

(2)培地

 培地は微生物を生育させる場であるとともに栄養源である。一般に微生物を構成する主要物質はタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、無機塩類であるから、培地中にはこれらをつくるのに必要な炭素源、窒素源、無機塩類が含まれていなければならない。


A. 培地の主成分

a.炭素源

 特殊な微生物(炭酸ガスを利用する細菌)を除いては炭素源として炭水化物、とくに糖類(ショ糖、ブドウ糖など)、デンプン、有機酸塩、タンパク質の分解物、アミノ酸類などが用いられる。その必要量は単に微生物の生育を目的とする場合、細菌では 1.0 - 0.2 %、酵母やカビでは 5 % くらいで充分である。

b.窒素源

 空中窒素固定菌以外は窒素源を添加する必要がある。これには普通タンパク質またはその分解物、無機アンモニウム塩がもっともよく用いられるが、アミノ酸、尿素、硝酸塩なども用いられる。微生物の生育を目的とする場合は、窒素元素として 0.1 - 0.5 % で充分である。

c.無機成分

 無機成分として培地中に含有する必要のあるものは、P、S、K、Na、Mg、Ca などであり、これらはリン酸塩、硝酸塩、その他の塩類として加える。この他微量成分として Fe、Cu、Zn、Mn などを添加する場合もある。しかし、これらの微量無機成分に関しては他の成分の不純物としてや、器具の汚れなどから充分量が供給されることが多い。

d.その他の成分

 微生物によって炭素源、窒素源、無機成分の他に特殊な生育因子(ビタミン類、核酸、塩基など)を必要とするものもある。




B. 培地の種類

 微生物の種類あるいは実験目的に応じて、それぞれ適当な培地が使用される。材料によって大別すると天然培地と合成培地の2種がある。後者の培地は化学薬品のみで作製され、化学組成がはっきりしているため微生物の代謝系などの研究に好都合である。一部を天然物として他の一部を化学薬品とした培地(半合成培地)もよく用いられる。

 培地の外見、性質によって液体培地、固体培地に大別することもできる。後者は前者に寒天、ゼラチンなどを加えて、主成分にはできるだけ変化を与えないで固化したものである。前者は微生物の生理学的実験あるいは大量培養などに用いられ、後者は微生物の保存、純粋分離などに用いられる。




C. 培地調製上の一般的注意

 培地は微生物の種類、生育、生産物などを検討する重要な要因となるから、できる限りいつ調製しても差異のないことが理想である。そのため培地調製にあたっては、組成、pH、殺菌条件などを一定にするように注意することが大切である。




a.培地のpH

 微生物にはそれぞれ生育に適当なpH範囲があり、その範囲以外では良好な生育ができないばかりか、死に至る場合もある。したがって培地のpHを微生物によって適当な範囲に修正する必要があるが、殺菌後変化する場合もあるから注意を要する。適当なpH範囲は、細菌では 7.0 - 8.0、酵母では 5.0 - 7.0、カビでは 4.0 - 6.0 である。




b.寒天固体培地

 寒天の凝固性を利用して液体培地を固化したものである。寒天を炭素源として利用できる微生物がきわめて少ないことから利用される。通常液体培地に粉末寒天を 1.5 % 添加し、沸騰水浴中で加熱して溶解した後、熱いうちに(寒天は 45 ℃以下で凝固する)使用する容器に分注する。殺菌後に無菌的に殺菌した容器へ分注する方法もあるが、その場合は殺菌時に寒天が溶解するので、溶解の操作は不要となる。培地のpHが 4 以下の場合は加熱殺菌により寒天の分解が起こり凝固しなくなるから注意を要する。

 斜面培地をつくるには殺菌後試験管等を横に傾けて放冷固化(図 )すればよい。




c.培地の殺菌

 作製し容器に分注した培地は必ず直ちに殺菌する。通常、合成培地はオートクレイブで 110 ℃、10 分、天然培地は 120 ℃、20 分の条件で殺菌する。培地の組成により熱分解しやすいもの、重合物をつくりやすいものを含む場合は、適当な殺菌条件でそれぞれの成分を別個に殺菌し、殺菌後の各成分を無菌的に添加して完全な培地を作製する。




d. 一般培地の調製法

 培地の組成は微生物の種類、実験目的などによって異なり、多くの種類の培地があるが基本的なものをあげると次の通りである。














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